私には何か欠落していた
その昔、私は詩を書いたり小説を書いたりするのが好きな女の子だった。
その世界に没頭している時だけは日々のことを忘れられた。
枡野浩一さんの書く文章を好きになった。
音楽の趣味が重なっていても驚かなかった。
私には何か欠落していた。
それが何なのか気づくのに相当な時間がかかってしまった。
結婚してから詩を書かなくなった。
書く必要がなくなったのかもしれない。
子供を欲しいと思えなかった。
他人の子供や赤ちゃんを見てかわいいと思うこともなかった。
私には関わりのない世界だと思った。
ほどなくして弟に子供ができた。
何故か小さい頃の自分に似ていた。
目線が合う。
今まで感じたことのない形容しがたい感情がこみあげてきた。
私も子供を持っていいのではないか、そう思い始めていた、