○○彼女が見たいくつかの日々○○

公開することは後悔すること

私は涙を流していた

私は涙を流していた。
「……何を…考えるんですか」
「出処進退をですよ。出処進退の意味がわからない?」
馬鹿にされていた。
「これは解雇ですか?解雇じゃないんですか?」
「解雇できないからこうやってお話してるんじゃないですか。わかってくださいよ」
「解雇じゃないんだったらやめません」
私は目の前の人物の目を見据えて言った。
「1日ゆっくり考えてみて…」
「1日考えても考えは変わりません」
目の前にいるのは今、敵だった。


一時間後、辞令が出された。
「○○殿 令和元年▫月▫日付より△△センター勤務を命ず」
日付は明後日。頭が追いつかず、呆然としていた。
ここまでやるんだ…。そうなんだ。ここまでして私を追い出したいんだ…。
現実に起こっていることを飲み込むのに時間が必要だった。
その夜は一睡もできなかった。

翌日、有休を取り弁護士事務所に相談に行った。
「これは……やりますね」
辞令を見た弁護士は驚嘆の表情を浮かべた。
転勤先は今よりも倍、通勤距離があった。
弁護士によると解雇は正社員である以上簡単にはできないが、配置替えは認められている。一概に通勤できないともいえない距離であるので違法とまではいえないだろうとの見解。

私は会社を辞めることにした。

初めて居場所ができたと思えた場所だった。
みんなのことが大好きだった。
みんな優しかったから。
でも去らなきゃいけない。

休みを終えて上司に連絡した。
「退職します」
「わかりました。○○さんね、1日出てきて引き継ぎしてくれないかな?」
この上司は何も見えていないし、上司の資質がない。
「それは難しいです」
私は答えた。

これから私は何処へ行くのだろう。
リセット?違う。私は確かに進んだ。
景色が変わっても私は私なりに進んでいく。