神様から許された私
10代のころ、「Itと呼ばれた子」という本を読んでいたら、またそんな本読んでるの?とはっきりと嫌そうな顔で母に言われた。
(またって、そんなに読んでたかな、この手の本・・・)自分ではわからなかったが、それ以降、本にはできるだけカバーをかけるようにした。
私は長い間母の価値観で生きていた。
母の言うことが絶対だった。
でも残念なことに私は母の期待に添える子ではないようだった。
母に認められるために私は自分を殺した。
母の顔色を伺うクセがついた。
いつも自分に自信がなかった。
自分を偽らなければ愛されないと思っていた。
人に合わせることに全力を注いだ。
自分の意見などどうでもいいというかそもそもなかった。
インターネットを始めてある人物と出会った。
頭の回転が速く、マメで俺様で私を特別扱いしてくれた。
彼女がいるのに深夜メッセのやりとりをしたり、たまに電話をかけてくれた。
私は彼のことが好きだった。
「俺の愛人になれ」「いいよ」
「好きだ。〇〇」「私も。はにーちゃんとどっちが好き?」
「・・・〇〇のことは好きだけど、その、はにーちゃんは、何もかも知ってて許してくれてるのかもしれないと思うと、・・・」
正直なひとだなと思った。
私は結婚した。彼の連絡先を消して。
結婚式で私は母に手紙を書いて読んだ。
読み終わって顔を上げると母は泣いていた。
いろいろと間違っていたのかもしれない。
でも母は母なりに私を愛してくれていた。
私は神様から許されてここにいる。
そう思えた。